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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)737号 判決 1958年10月17日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人弁護士松永東、同緒方勝蔵、同佐藤弘の上告理由は別紙のとおりである。

上告理由第一点について。

論旨は原判決は判決理由に齟齬がある旨を主張するのであるが、うち一の(1)は、本件選挙に用いた第一、第二補充選挙人名簿の無効を主張するに帰する。しかし、この点について原判決の認定するところによれば、第一補充選挙人名簿については昭和三〇年二月一日、第二補充選挙人名簿については同年三月二九日それぞれ市選挙管理委員会を開き、右作成に関する必要事項をすべて議決し、公職選挙法施行規則所定の方式にしたがい作成、これに市選管理委員長の氏名の記載押印がなされているというのであつて、これを違法無効とすべき理由はない。論旨は市選挙管理委員会会議録に名簿調製に関する議事の記載がないというのであるが、補充選挙人名簿の調製は法律上右委員会の義務に属し、右第一名簿は衆議院選挙に際し、第二名簿は県知事及び県議会議員選挙に際しそれぞれ調製されたものであるからこれらの補充名簿に関する調製、縦覧、異議の決定及び確定に関する期日及び期間並びに申請の期間及び方法等は県選挙管理委員会が定めるのであつて(公職選挙法二七条三項)、市委員会はこれらの事項を前提として縦覧場所を定めたのであるから、所論のように、調製するかしないかについての議事が会議録に記載されていないからといつて委員会書記が右名簿を勝手に作成したものとはいえない。その他の論旨は原審の証拠の取捨、事実認定を非難するに過ぎず理由がない。論旨一の(2)は、第三補充選挙人名簿について、申請期間経過後の申請を受理し登録した違法があり右名簿は無効である旨を主張するに帰する。しかし、期間経過後において、登録申請した一六名の者を登録したことは原判決の認めるところであるが、かかる違法は、登録すべきでない者を登録したことに帰し、結局個々の登録の違法であり、公職選挙法二九条、二三条、二四条に定める手続によつて是正されるべき違法であつて、ために右名簿を無効であるとはいえない。論旨は理由がない。

論旨二は、本件選挙は、管理執行に関する規定違反があり結果に異動を及ぼす虞がある旨を主張するのであるが、論旨は、前述の各名簿が無効であることを前提としており、そして、その無効でないことは前段説明のとおりであるから論旨はこれを採用することができない。

上告理由第二点について。

論旨は原判決に法令違反がある旨を主張するのであるが、要するに、前記各名簿が無効であることを前提としかかる無効な名簿を用いてした本件選挙の無効を主張するのであつて、その理由がないことは前記上告理由第一点に対する説明によつて明らかである。

以上説明のとおり、本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大介 裁判官 奥野健一)

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